2026/03/22 15:56

農業でよく言われる「土作り」という言葉。私はこの言葉が苦手だ。特定の枠の中で特定元素だけで土を構成し、それ以外の要素は限りなくないものとして、かつ一年で完結するとした場合は、この考え方で成立するのだと思うが、自然栽培のように不確定要素を丸ごと許容する栽培では難しい。
そもそも、自然栽培とは数値化されない微生物や微量元素に重きを置いた栽培で、これを前提として土作りを行うとした場合、どれだけの個別要素を組み入れる必要があるのか、という話になる。これについてはAIの頭脳をもってしても、現時点では解決する見込みはない。なので、当然私の頭が追いつくわけもなく、さらに言うと、理解できていないことをして上手くいくわけがないのだ。
数年は上手くいったとしても、「それは持続可能なのか?」という問いに真正面から全方向に向かって「持続可能です!」と言える生産者は果たしているのか?その答えは「NO」だ。そんな人に私は会ったこともないし、仮にいても貧乏だ。清貧と言えば聞こえは良いが、誰が好んで貧乏の道に進むというのだろう。
「あなたがまさに好んで貧乏の道に進んだではないか」
という人がいる。しかし、これは誤解だ。私は声を大にして言いたい。
「私は清貧を目指して農業を始めたのではない。持続可能で豊かな農業を行い、自由と富を手に入れるために農業を始めたのだ!」
そんなわけで、私はこの「土作り」の概念を捨てた。捨てたというよりも、はなから持っていなかったという方が正しいが、完全否定するほどの確信も得ていなかった。土なんて人には作れないんだ。
土とは、岩石と粘土と腐植からできていて、腐植は植物遺体とその食べ残しからできている。この割合によって酸性になったりアルカリ性になったり、化学物質の構成が変わってくる。現在の農業(慣行農業)の資材として主に使われる窒素は人工的に作られ、リン酸、カリウム、石灰は堆積層から採掘されている。
土なんか作れないと思っている私は、
「そもそも、窒素、リン酸、カリウム、石灰ってなんなん?」
と、今さらだけど思う。いや、マジで理解してるのか?
窒素は生体反応に欠かせない要素で、タンパク質、アミノ酸、葉緑素などを構成する主成分であり、リン酸は根の発育や花や実の形成を良くする。カリは根や茎を丈夫にする。石灰資材には、生石灰、消石灰、苦土石灰、有機石灰があって、それぞれに特徴がある……って、全然入ってこない(乙)。
そうなんだよ、私は枝葉を言われても全然入ってこない人間なんです。学生の頃、数学の先生で「わからなくてもいいからこの方程式を覚えてね」と言う先生がいたんだけど、いや、いたというか多くがそうだったんだけど、私はこれが無理すぎて、「この方程式になる理由を教えてくれ、そうすれば暗記しなくても済むから」と思っていた。これは私の個性だ。
そんなわけで今日は、今月から始まる植え付けに東京から来てくれる友人への歓迎の意を表したくて、朝からビオワインをネットで選んでいた。ドメーヌとして興味のあるサルヴァドール・バットヤのコスミックシリーズを見ていて、そこから石灰質土壌の話に移行した。
簡単に言うと、ブドウの木は石灰質の土壌を好む傾向にある。石灰岩に含まれるカルシウムは、土中の酸と化学反応を起こすとイオン化して水に溶けるカルシウムイオンになる。カルシウムイオンになると植物が吸収できるのだが、人もブドウの木も、これが微生物由来(排出物)なのか石灰岩由来なのかは識別できない。だから、化成肥料だろうが微生物由来だろうが関係ないだろ、という主張がある。
ただ、その上で言えることがある。活性状態の石灰が多量に土中にあると、どんどんアルカリ性に土が傾くのだが、石灰質の土壌であれば、常に活性石灰が溶け出してアルカリ性を保ち、なおかつpH8.5で安定する。これこそがその土地のバランス(テロワール)であり、これを人が再現するのはなかなか難しい。だから、野生の食べ物、例えば野草や山菜の美味しさ、特に香りやエナジーを農作物は超えられないのだ。
これに挑戦しようというのが自然栽培なんだよね。そもそも無謀(笑)。
でね、私が「土作り」と同じ程度、もしくはそれ以上に違和感を感じている言葉が「自然栽培」なんだ。自然って何?と自分でもツッコミを入れまくっている。だって、田畑自体が人工物なんだもん。農村は人工物です。
だから私は、「自然栽培」とは人工土壌を作る試みの一環なんだと考える。人工土壌とは何かといえば、土壌サイクルを人が作るということだ。
土とは単なる物質ではなく、鉱物と粘土と腐植の混合物であり、自律的かつ持続的な物質循環こそが土の本質。この循環を模倣しようとしているのが「自然栽培」というわけです。なんちゅー世界に足を踏み入れてしまったのか。しかし、この好奇心を捨てることはもう出来ない。

今年は、目標とする生姜の収穫量を得る畑以外に、4つの圃場で12パターンの実証実験を試みている。もはや「自然」とは大きくかけ離れた世界線だ。しかし、決して手放さない思いが3つある。
1、シンプルを心掛ける
2、自然由来に資材しか使わない
3、トレーサビリティーを重んじる
そして、いつかきっと、持続可能な土壌サイクルを完成するんだ!
当店をご利用の皆様には、「買うことでこのプロジェクトに参加しているんだ」と思ってもらえればこの上なく嬉しい。そして、タイミングが合えば、買うだけでなく、栽培体験にも参加して欲しいです。
今日は、深掘りした石灰について、以下にまとめておきます。
・石灰は石灰岩を砕いたもので、植物プランクトンが堆積して化石化したもの。
・2mm以上は岩や石とされる不活性石灰。
・2mm以下の粒子(活性石灰)にして農業資材として使われる。
・土中の酸と化学反応し、水に溶けるカルシウムイオンとなり植物が吸収する。
・植物の細胞壁などの組織づくりに必要。
・多く入れすぎると鉄分の吸収が悪くなる。
・石灰資材には「生石灰」「消石灰」「苦土石灰」「有機石灰」がある。
・生石灰は石灰岩を焼いて粉末にしたもの。
・消石灰は生石灰に水を加えたもの。
・苦土石灰はドロマイト(苦灰石)が原料で、炭酸カルシウムと炭酸マグネシウムを含む。
・有機石灰は貝殻などを粉末にしたもの。
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もう少し時間がかかると思いますが、どうぞよろしくお願いします。
