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2024/03/11 12:11

「生姜を育てる仕事って具体的に何をするんですか?」


と聞かれることがある。
まずは畑つくり。タネ生姜を植えてから7ヶ月の間、生姜自身が分けつしながらクローンを増やすための培地作りで八割。残りは自然の脅威、つまりは大気変動から生姜の茎や葉を守るための仕事、そして葉による光合成を高めるためのサポート作業ってところ。自然栽培では化学農薬を使わないので、上部は風通しを良くするために草を刈り、下部は真夏の暑さによる過度な地温上昇を避けるために適度に草を残す。この作業自体適期に行うことがとても大事になってくる。何はともあれ、まずは生姜を植える前の畝と溝の構造が要だ。もともと水はけの良い圃場であれば然程難くはないれど、長く続けると好条件の圃場ばかりというわけにはいかない。多少の難がある圃場であっても、一定数量を確実に収穫できるようにならなければ持続可能な農法とは言えないし、何より、農業の最大のミッションである、国民に安定して一定品質の作物を供給することを担うに値する農法にはなり得ない。時代のムーブに乗って自然栽培田舎暮らし妄想的意味不明なクオリティーオブライフとか、定年退職後にどうぞって思う。受け入れ難いことではあるけど、今の日本に自然栽培で豊かに暮らせる現実はない。いや、一部にはある、、けど、今の日本に持続可能な農業なんて何処にあるんだ!と思いながら、私は日々自然栽培で生姜を育てることに没頭している。





そんなことで、物理性に関わる技術は10年で相当獲得できていると思う。で、ここからが最終章の生物性と化学性だ。


有機栽培と慣行栽培は肥料を使う。慣行栽培では化学肥料と有機肥料を使い、有機栽培では有機JAS法に沿った肥料を使う。化学肥料を使う慣行農法では、微生物の働きがなくても直接植物が吸収できる肥料を使うので結果化学肥料を多用した畑には微生物はいなくなる。一方、有機肥料は微生物が分解する前提の肥料、もしくは化学性を備えた自然由来の資材を使うため、多用しても微生物がいなくなる事はないが、バランスが維持されるか否かは別問題である。有機肥料の入れすぎによる病原菌の発生や河川や地下水の汚染は起こり得る。そこで自然栽培が登場するのだけど、「自然栽培って何?」って思うよね。私も思う。ずっと考え続けてきた。自然栽培って何??まず簡単なところから説明すると、有機JAS法の基礎となる部分が自然栽培で、特例として、許されている肥料や農薬があって、ここまで含まれて有機栽培となる。この説明だけで理解できる人は大変ありがたい存在だ。自然栽培と有機栽培は別物ではないんだよ。だから、派閥はやめよう 笑


「有機栽培でいいじゃん!」って思うでしょ?でもこれがそう簡単には済まないんだよ。簡単にいうと、自然由来って何?って事。石油だって自然由来じゃん。でも有機JAS法だと石油由来はダメなの。だから、生分解性黒マルチはダメなのよ。産廃業者で処理されるポリエチレン黒マルチは良いのに。本質的におかしいでしょ?でもそうなの。直接土に入らなければ良いって、ただそれだけ。たかがこの程度の理屈の上に成り立つ農法になんの優位性があるんだって私は思う。だから、私は自然栽培に全てを突っ込んでいる。有機栽培なら自然栽培まで行かないと何も面白くないし、クオリティーオブライフも成り立たないし、持続可能かどうかもわかならい。少なくとも、蜂じゃないけど、自分が行動できる範囲の暮らしの循環の中で回せる資材で、それらが代謝的に連鎖している中で特定の作物を育むに至って初めて自然栽培と言えると考える。それが蜂なら半径2キロだけど、人ならどうなんだって話。人によってはフィリピンのネグロス諸島に知り合いがいて、そこで生産されるサトウキビの粕が手に入るからそれを使うかもしれないし、もしかしたら、年一で遊びに行く友達の放し飼いの養鶏所の鶏糞を使うかもしれない。それもアリだけど可能な限り蜂に習いたいと思う。だって、日本は何処を切り取っても山があるから。目の前に農業資材は山とあるんだよ。これを使いたいと心から思う。それと日本は米の国。何処でも田んぼがある。米ぬかがある。誰でも手に入る農業資材だ。これを使いたいと思う。だって一番コスパいいんだもん。そして、これが微生物の餌になるんだよ。

美しく美味しい生姜を作るには、生姜を育てる前に生姜に養分を送ってくれる微生物を育てる必要があって、微生物は育てられるようになることが、持続可能な農業とクオリティーオブライフにつながる安定した道なのだと、最近は強く思うのです。そんな事はわかっていた。何十年も前から分かっていたけど、この数カ月で私は自分の体に落とし込めた気がする。自分の意識の先が以前よりも少し分かった気がするのです。画像は今作っている発酵米ぬか。手で触ると花開くみたいにウゴウゴしている。


補足)現在、流通している生分解性黒マルチは、植物由来のものはなく石油由来になります。これを分解する微生物も特定されていて、その後の危険性もないことが研究機関では明らかにされています。

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